「38度…熱じゃないか…」
ぼーっと天井を見上げながらあーうーとただ唸りを上げるマルコを見て、ジャンルカは引き出しから体温計を取り出してマルコの脇に挟んだ。しばらくしてピピッと音が鳴り、ジャンルカは体温計に目をやる。熱だ。マルコが風邪を引いた。
「昨日ちゃんと髪の毛乾かしたか?」
「乾かした…よ…」
「暖かくして寝たか?」
「うー…、昨日はジャンが、隣で、寝…」
「(あ…そうだった…)」
虚ろな目でオレを見るマルコ。熱に犯されて顔も赤ければ体も熱い。
とりあえず風邪薬と水と、必要なものを取りに行こうと立ち上がるがマルコの熱い手ががっしりとジャージを掴んでいて離してくれない。行くな、という意味か。
「パス…、パスタ…っ」
「病人がパスタを食べるなんて聞いたことがない!」
「う…ん…意地悪…」
「(………なんか、かわいい…な…)」
にやける口元を隠しつつ、ベッドの隣にある椅子に腰掛けると虚ろな目のマルコと目が合う。汗で髪の毛が頬に張り付いていて、それを指で掬う。するとマルコがピクンと反応する。どうやらオレの手が程よい冷たさだったらしく気持ち良さそうに手にすり寄ってきた。
「冷たい、…きもち、い」
「(氷嚢と濡れタオル、取りに行くか…)」
そういえばマルコは粉薬が嫌いだったはず。
ちょっと悪戯心が疼いたからマルコに粉薬を飲ませることにした。