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28 謎を纏う少女

【第6話】




大勢の人々が、イッキたち目指して走る


『……、』


客観的に見なくてもかなりヤバいことは分かる

今の彼らにあれだけの人数を片付ける力はもう残っていない

――助けに、行かなくては…

朱音は自分がずっと持っているカバンに目をおとす

ここには念のためにと入れておいたA.Tがある

だが…今ここでA.Tを使ったら朱音が"金色"だとバレてしまう

だから、中々動くことができない

今まで積み上げてきたモノが、全部崩れる恐怖は、大きい

……偽りの上にできたモノなんて、いつか壊れるのは当たり前なんだけど……

今この場所が、居心地が良過ぎた


『…どうすれば……』


一人唇を噛みしめる朱音の視界の端で、ここにあるはずのないモノが動いた


『…!?』


見間違えかと思い、もう一度今度は真っすぐにそれを見る

あの、特徴的なマスクは間違いない


『な、なんでここにいるの…?』


"彼ら"が来たら、ますます収拾がつかなくなる…!

そう思ったときにはもう手遅れで、一発の銃声が鳴り響いた


ドガンッ


「できすぎにお似合いだな。さすがは元下水処理場だ。たっぷりウンコクズが集まってやがる」


まだ煙が漂っている銃を持ち、にやりと笑ったのは新宿の鰐とも呼ばれる海人だった

いつの間にかマル風Gメンが周囲を包囲している

海人にしてみればこれほどいい機会はないだろう…何しろ数百人以上の"ウンコクズ"がこの空間にいるのだから


『―――咢か…!』


おそらく咢は自分たちが上手く逃げれるよう、わざとマル風に情報を漏らしたのだろう

確かにこれだけ混乱していたら逃げることぐらい造作もないだろう

だが、遠慮なく銃をぶっ放し、男女関係なく攻撃されている光景を見るのは、あまり気分がいいものではない

これ以上被害を増やす前に、ここは私が出るしか―――…


『……、って…子供…!?』


迷っている朱音の視線の先に、暴徒たちに紛れてしまっている子供の姿が映った



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