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「……アキラ、待ってるね。金姐帰ってくるの」
『…、ずっと王璽使ってないんだって?』
その明らかな話題変換に気づかないふりをして、蓮花に問いかける
「私がお願いしたね。金姐がいない時に、使って欲しくなかたから…」
『なら、蓮花がいいよって言ってあげなきゃ』
私では彼のもとには行けないから……
『あ、でも私がいることは言っちゃダメだよ?』
「……わかったね」
蓮花は理由を聞くことなく頷き、戦っているアキラのもとへと向かう
"金色"がいない時に王璽を使わないようお願いしたのは、他でもないこの自分
――使えば使う程、少しずつだけど確かに王璽のズレは生じてくるから
それは放置してても同じことがいえたが、それでも使い続けるよりかは軽減されることを"金色"は教えてくれた
自分のために、咢から獲ってくれた牙の王璽
"金色"は王璽をアキラに調律した後、突然姿を消した
あの時のアキラは見てられなかった…
「……」
蓮花はフィールドの上に立ち、彼らを見下ろす
咢とイッキに押されていたアキラは、ふいに見上げ少女と視線を合わせる
そして蓮花は小さく頷き――アキラは目を見開く
アキラを空から遠ざけた王璽を使うことを嫌っていた蓮花の思わぬ肯定
「………、」
コンジキ、と小さく心の中で呟いた後、カッと目を見開くアキラ
数年ぶりに使う王璽のズレはもう限界ラインにきていたが、気にすることはなかった
ハンマーを囮にし、躊躇することなく"牙"を放つ
ベビーモス1034人の誇りを背負い、"超獣"は君臨する
戦の流れがガラリと変わったのを、悲しげに見つめるのは朱音
『……もっと、自由に飛べばいいのに…』
でも、アキラは飛ぶことができない
A.Tの構成上、エアができないのだ
『……頑張って……』
今の朱音は、ただ祈ることしかできなかった
。
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