Fly! | ナノ




23











…―――俺は、無敵だった

無敵になるのは難しくなかった。俺たちを取り巻く全てが敵だったからな。ただその全てに牙をたて続ければよかったんだ

アキラがいて、"金色"――朱音がいて

血溜まりの底で、いつしか"王"と呼ばれるようにもなった


――あれは、いつからだった?


あの夢を…亜紀人がコワれる夢を見るようになったのは…この体が、思うように動かなくなったのは…

この日がくるのは、あの血溜まりの中で生まれた時から知っていた

1つの体に2つの人格…そんなモノいつまでも保つわけがない

<俺>の存在が、亜紀人を蝕んでいく

だから、俺は今日限りで消えるよ、亜紀人

もうココにはあの頃みてぇな敵も、俺の必要性も……居場所も、ないから


「お…俺…がっレガ…王璽をっ…とる……から……!」


必ずとるから…亜紀人、お前だけはあいつらと…ずっと―――!


「…かつて最強と言われた"牙"が、これ程までに折れているのを見るのは俺もつらい」


なんでだよ…!


「せめて次の一撃で楽にしてやろう…永遠に…!!」


俺は結局何一つ残せねぇんかよ…俺がここにいた証すら残せずに――!


「ちっくしょおおおおお!!」


涙を流しながら叫んだその時、突然地面が崩れた


「!」


そのまま何もできず下へと落ちていく2人

その先には、同じく落ちてきたイッキとハンマーの姿があった


「アーギートー何やってんだよっそんなツラしやがって!」


澱んだ空気は風が根こそぎ吹き飛ばした

ココはもう井戸の底ではない―――空だ


「忘れてるみてーだからよ、もう1回教えてやるよ。空の飛び方ってやつをな!」





『……、イッキ』


スクリーンから目を逸らさず、朱音は小さく呟く

――咢を、救ってあげて



[ 83/386 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -