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一方その頃リンゴはというと、
「…ふ――――…」
大きく深呼吸をした彼女は、本気モードだった
いつもいつも邪魔され続けられ、ここで我慢の限界がきたのだろう
――お望みなら魅せてあげる!正真正銘私の本気全開モード!!
深き眠りに誘う禁断の森の果実―――クレイジーアップル
リンゴの後ろに技影が映る
中世の女騎士に似た、荊を纏った女神
「…!」
スピット・ファイアの王璽がそれに反応して炎を吹き上げる
「さすがはアノ武内空の創った"眠りの森"その正統後継者。ダテじゃねぇな、眠りの森の女王」
バチバチッと鵺の王璽も反応を示している
『……っ、…』
そんな彼らを余所に、朱音は苦しげな声をもらしてその場に座り込んでいた
鵺とスピット・ファイアの王璽が反応したのとほぼ同時に
「おい…?」
鵺がその異変に気づき声をかけるも、朱音は苦しげに呼吸を繰り返すだけで返事はない
ふらつきながらも立ち上がり、よたよたと危なげな足取りでここから立ち去ろうとする彼女は、片目を手で強く押さえつけていた
「何してんだ、」
鵺が朱音の手をとり、無理やり向き合った
「…!?」
一瞬、彼女の瞳が真っ赤に染まった
瞬きしたらいつもの黒色になっていたが……気のせいではない気がする
『はな、して…っ!』
朱音は鵺を突き飛ばし、その場から走り出す
一瞬遅れて鵺もまた追いかけ、彼女が曲がった角をすぐ曲がるのだが――…
「……いねぇ?」
まるで最初から存在していなかったかのように、彼女の姿はどこにも見えなかった
隠れる場所も何もない1本道の通路から姿を消した朱音
「…どうなってんだよ」
先程のアカ色がチラつく
隠しきれない苛立ちが言葉に滲んだのを自分で感じながら、鵺は渋々来た道を引き返した
スピット・ファイアは1人で戻ってきた鵺をチラリと見るも、何も言うことなく視線をスクリーンへと戻した
それは現か幻か(触れてはいけない領域)
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[mokuji]
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