Fly! | ナノ




21





一方その頃リンゴはというと、


「…ふ――――…」


大きく深呼吸をした彼女は、本気モードだった

いつもいつも邪魔され続けられ、ここで我慢の限界がきたのだろう


――お望みなら魅せてあげる!正真正銘私の本気全開モード!!


深き眠りに誘う禁断の森の果実―――クレイジーアップル


リンゴの後ろに技影が映る

中世の女騎士に似た、荊を纏った女神





「…!」


スピット・ファイアの王璽がそれに反応して炎を吹き上げる


「さすがはアノ武内空の創った"眠りの森"その正統後継者。ダテじゃねぇな、眠りの森の女王」


バチバチッと鵺の王璽も反応を示している


『……っ、…』


そんな彼らを余所に、朱音は苦しげな声をもらしてその場に座り込んでいた

鵺とスピット・ファイアの王璽が反応したのとほぼ同時に


「おい…?」


鵺がその異変に気づき声をかけるも、朱音は苦しげに呼吸を繰り返すだけで返事はない

ふらつきながらも立ち上がり、よたよたと危なげな足取りでここから立ち去ろうとする彼女は、片目を手で強く押さえつけていた


「何してんだ、」


鵺が朱音の手をとり、無理やり向き合った


「…!?」


一瞬、彼女の瞳が真っ赤に染まった

瞬きしたらいつもの黒色になっていたが……気のせいではない気がする


『はな、して…っ!』


朱音は鵺を突き飛ばし、その場から走り出す

一瞬遅れて鵺もまた追いかけ、彼女が曲がった角をすぐ曲がるのだが――…


「……いねぇ?」


まるで最初から存在していなかったかのように、彼女の姿はどこにも見えなかった

隠れる場所も何もない1本道の通路から姿を消した朱音


「…どうなってんだよ」


先程のアカ色がチラつく

隠しきれない苛立ちが言葉に滲んだのを自分で感じながら、鵺は渋々来た道を引き返した

スピット・ファイアは1人で戻ってきた鵺をチラリと見るも、何も言うことなく視線をスクリーンへと戻した




それは現か幻か
(触れてはいけない領域)

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