01 kanata side
一瞬の気持ち悪い浮遊感の後、景色は180度変化していた。
「着いたぞ」
「……」
「へぇ…ここが…」
俺達3人の前には、毒々しい程赤い門がそびえ立っていた。
そう、"瞬間移動"でウルとユウ連れてやってきたのは、あの不夜城ユールグールの入口だった。
まだ中に入っていないというのに、ここに立っているだけで異様な熱気が頬をなでる。
"門"の外側からフラフラと何人もの人間か何かに引き寄せられるようにして中へと入っていく。
今入っていった人間の半分程度はきっともうこの門をくぐることはないのだろう。
不夜城…眠ることのないこの街で夢に浸り、そのまま"死んで"いってしまう者もまた、この街は非常に多いのだ。
「いいか、この門をくぐったら絶対に俺の傍を離れるなよ。トイレに行く時でさえ、俺かウルと一緒に行け」
「……わかった」
いつものように文句をブツブツ言うのかと思ったが、ユウは大人しく従順に首を縦に振った。
まぁユウみたいな奴でも、この門の向こう側は何かが"チガウ"ということを肌で感じ取っているのかもしれない。
「…大丈夫か、ウル」
「………大丈夫…大丈夫です。早く行きましょう?」
明らかに大丈夫そうな顔色ではなかったが、こればかりはもうどうしようもない。
小さく震えている頭に手を乗っけてやると、少しだけ表情が緩まった。
それを見て、俺はゆっくりと大きな門をくぐり抜けた。
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