silver wolf | ナノ




64



―――語ればとてつもなく長くなるから、凝縮してそれからの5日間を綴っていこうと思う。


<初日>
朝、まだ日が昇ったばかりの頃にウルによって叩き起こされる。
文句を言うも全く聞き届けられることはない。
この日は朝から晩までず――――っとウルとつきっきりで勉強に費やすことに。
昼過ぎにカナタさんが起きてきた姿を見て殺意がわいたのはここだけの話だ。


<2日目>
昼過ぎ、カナタさんによって布団から振り落とされるようにして無理やり起床。
文句はやはり聞きいれられることはない。
この日はただひたすら、外でカナタさんの剣を避けた。
俺に合わせてくれていると感じるが、抜き身の刀を向けられる恐怖は言葉にできるわけがない。
悪ィ、という言葉だけで顔面スレスレのところを通り過ぎた"紅咲"を許せる程俺は人間できていない。


<3日目>
今日はウルの日だから、当然のように朝早く起こされる。
ここ数日で俺の体重は絶対にいくらか減少傾向にあることは想像にかたくない。
今日は本格的な魔術を使った特訓だ。
しかし魔術という概念を知ったばかりの俺が上手くいくわけがなく、散々なものだった。
コップに大気中の水分を集めて水をいれる、という魔術を教わった。
コップ分だけのつもりが何故か滝のように集まり、ウルを水浸しにしてしまい怒られる。
そしてその水浸しのウルの姿を見てカナタさんが笑ったせいで、俺はこの日一日中ウルから冷たくされた。
理不尽すぎて笑える。


<最終日>
明日出発だから今日は休め、と言ってくれるほどカナタさんは優しくなかった。
今日はもらった"流牙"を扱えるよう、ひたすら素振りをやり、カナタさんと模擬戦をやる。
もちろんカナタさんにとっては退屈以外の何物でもなさそうだが、俺にとっちゃかなり真剣。
途中意地悪く魔術も使ってくるからタチが悪い。
俺がビビる姿を見て楽しそうに笑う姿はもはや悪魔だ。
夜はさすがに少し早めに解散となったが、その余った時間は全て睡眠へと捧げられた。
夢の中でさえ、俺はカナタさんにイジメられていた。勘弁してくれ。




以上が俺の不憫すぎるハードな1週間の全容である。
こうして矢のように日数は過ぎていき、あっという間にユールグールへ出発する日がやってきたのだった。

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