63
「やっぱりウルには分かるか」
「分かるか、って…これ、すごい刀じゃないですか!宝刀ですよ、宝刀!!世界に7本しかない"ゴロジ"の作品!妖刀ではないものの切れ味、強度、軽さ全てを見てもトップクラス!売ればそれこそ金貨が何枚も来るような刀ですよ!!」
珍しいといえる程興奮しているウルの様子からして、この刀は本当の本当に凄いヤツらしい。
そしてその相当凄いらしい刀を――カナタさんは、俺に向かって投げてきた。
「うぉっ!!」
当然鞘に入ったままの状態だったけど、高級品をいきなり投げ渡されて平気でいわれるほど俺は日本で金持ちなんかやっていない。
「お前にやるよ、ソレ」
「えぇっ!?」
俺、自慢じゃないけど生まれてこのかた一度も竹刀ですら握ったことないんですけど!!
いきなり真剣渡されて平気でいられるわけがないのだ。
「お前、俺が見た限り運動神経は絶望的って程悪くはねぇから、取りあえず護身術ぐらいは教えてやる」
「え、」
「魔術教えるのは面倒だからウル、体動かすことなら(俺のストレス発散にもなるから)面倒みてやるよ」
なんだか聞いてはいけない心の中の声まで聞こえてきそうで俺は慌てて首を縦に振った。
ま、まぁ別に損することはないはず。カナタさんが強いっていうのは今まで一緒に行動してきてよく分かってるし?
でもなーんか嫌な予感がするんだよな…こう、何か一筋縄じゃいかないかんじの…
「ユールグールに行くまでの残り日数で、お前を足手まといにはならない程度に俺とウルが鍛えてやる」
残り日数は、今日をいれてあと5日。
ニヤリ、とそれはもう楽しそうにカナタさんが笑ったのを見て、思わず乾いた笑いがこぼれた。
.
[ 90/146 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]