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「結果、この国には正当な王位継承権を持つ人間がいなくなり、リトの強すぎる力もあってそのままリトは王位についた。そっからはもうやりたい放題だよ…お陰で今治安は最高に悪くなってるんだ」
「そうなんだ…」
「強くて美しいリトに心酔する者が現れる中、当然反発する人たちもいる。この絵本を出版した人たちもそういう反政府組織の人たちだったんだろうね」
"最後の王様"……それは確かに今の王を絶対に認めないという確固たる意志表示だ。
作者も、出版社も、そして買い手も……今の王から見れば全て反政府組織のようなものなのだろう。
「今だってリトは少しでも自分に逆らう者がいれば探し出してでも殺しに来るよ。だからこそ、大抵の人は不満を抱えながらも大人しく暮らしている」
「大抵ってことは…」
「まぁ所謂"反乱軍"ってのはいるね。今の王を倒そうとする反政府組織。本人たちは"抵抗軍"って名乗ってるけど」
「―――だが反乱軍だと分かれば一網打尽に殺される。それこそ自分と血の繋がっている奴らまで、な」
ふいに、第三者の声が家の中に響く。
2人同時に振り返ると、壁によりかかるようにしてカナタさんがこちらを見ていた。
てかいつのまに帰ってきたんだろ…全然気配を感じなかったけど。
「あ、おかえりなさいカナタさん!いつ帰ってきてたんですか!?」
「反政府組織云々ってところから。ただいま、ウル」
嬉しそうに見えない尻尾をふって駆け寄るウルの頭を撫でた後、俺のほうへ近寄ってくる。
「まった懐かしいモン見てるんだな、お前は。どこから引っ張りだしたことやら…」
「絶対難しいって分かる本たちに囲まれてたから気になっちゃって。なんでカナタさんはこれ持ってんだ?もしかしてカナタさんも反政……」
「俺は違ェよ。あんな弱い奴らと一緒にすんじゃねぇ」
冗談じゃないとばかりに言われた言葉とともに頭を軽く叩かれた。
ウルと俺の扱いが全然違う気がするのはたぶん気のせいじゃない…てか絶対気のせいじゃない。
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