silver wolf | ナノ




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「いわゆるクーデターってヤツだよ。どこからともなくやってきたリトはその圧倒的な魔力と武力で城を襲撃したんだ」

「そんなに強いのか?リトって」

「そりゃあもう凄かったらしいよ。多系統の魔術を完全に使いこなし、剣の腕もピカイチだったらしいもん。まるで魔族のようだとまで言われてたし」

「魔族?」

「………僕らよりも"魔"に近い生き物の総称。魔力が強ければ強い程にヒト型で美形に、弱ければヒト型にすらなれない。戦争になるのも寸前だと言われてるルルア国に多く生活している人たち!」


もう何も言う気にならないのか、ただ言葉を繰り返しただけで丁寧に説明された。
いや、別にありがたいんだけどね。
でもこうなったら開き直って色々聞きまくるしかないだろ。


「ルルア国?」

「…………アズウェラと同じくらいの大きさの国。最近になって急速に力をつけはじめた国。頂点に君臨するのは"魔王"と呼ばれる人で、その正体は不明。本当に存在しているのかどうかも曖昧。人間に虐げられた魔族が集まってる国でもある」


沈黙が長かったけど、結局はちゃんと説明してくれるウルはきっと元がイイ子なのだろう。
本当はまだ聞きたいことが山のようにあるのだが、これ以上聞いたら怒られそうだからやめておくことにする。


「どこまで話したんだっけ…あぁ、そうそう。リトの襲撃まで話したんだ。それで、たった1人で城を攻めてきたリトを誰も止めることができず、結果シュール様はリトに殺された」

「たった1人で!?」

「弱い人は何人集まろうと弱いけど、本当に強い人は1人でも国を落とすことができるもんなんだよ」


もちろんそんな人は少ないけどね、とフォローになってない言葉を繋げるウル。


「この国にはシュール様の血を継ぐ直系の子供が2人いた。1人は随分前に病死したけど…残ったほうの王子もリトに殺されたらしく……っていうか、少しでも王の血筋を持つ人間は全て殺されたんだ。だから……たった一夜で、黒を継ぐ人たちはこの世界から姿を消した」


――どうやら想像以上にリトという男は危険な人物らしい、とようやく理解できた。同時に、俺も危険だということを……
今ならカナタさんの俺の目を見た時の驚きも理解できる。
そりゃ全滅した王族の特徴でもある黒い瞳を持ってたら驚くに決まってる。目の色を変えてくれたカナタさんには感謝だ。

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