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「わしから言えるのはその一言のみ。誰でもない、"お前"はこの案件からは手を引いた方がいい」
このジジィがここまで言うというのなら確かにコレからは手を引いたほうがいいのかもしれない、という考えが頭をよぎる。
ジジィだのクソジジィだの言ってるが、このオーリは指折りの闇商人でこの筋の人間なら誰でも知っているぐらいの有名人だ。
当然横の繋がりも広く、コイツの持つ情報はガセが少なくて優秀なものばかり。
そんなジジィからの"忠告"は、気のせいだと軽々しくスルーしていいものではないことは十分分かっている。
「……せっかくの忠告だけど、この依頼は断ることはできねェ筋からのモンだ。言葉だけ受け取っておくよ」
危ないからと言って簡単に断れる筋からの依頼ではないのだ。断るのはほぼ100%の確立で不可能。
肩をすくめて現実を語ればジジィはわざとらしくため息をついた。
「ふん。どうせそんなことだろうと思ったわい。"雉"の情報をもとめてくる時点で厄介なモノを抱え込んでるとな」
「分かってんならわざわざ言うんじゃねーよ」
こちらも負けじと大きなため息をついた後、ジジィに向き合う。
「情報はそんなもんでいい。総額いくらだ?」
"ロゴロイド"が括りつけられたネックレスを指でひき、金を出す準備をする。
今回ムカつくこともあったが有力な情報を得ることもできたから、できる限りの言い値で払ってやるつもりだ(できる限り、だが)
「1,000」
「……この店を跡形もなく壊されたいのか?」
「ふん。懐の寒い男じゃな。しょうがない、850リオンで手を打ってやろう」
850リオンという言葉に、俺は手のひらに浮かべていた大きな火の玉を消した。
1,000だともう一度戯言を言うつもりならボロいこの家に致命傷を与えてやるつもりだったが、850リオンならまぁ妥当だと言える。
俺はわざとらしくため息をついた後、"ロゴロイド"から金を引き出すために人差し指を動かした。
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