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やっぱりこのジジィはウゼェ。
できれば今この場で焼き殺してやりたいぐらいには、な。
「情報は以上だ。これ以上は殺されようとも何も出せん」
「おい、さっき俺の仲間がどうって言ってただろ。アレどういう意味だ!」
「知らんものは知らん」
「ジジィ…」
意味深な言葉を残しておきながら頑として口を開こうとしないジジィに、本当に殺してしまう前にと帰ることにした。
こうなってしまったらコイツは絶対に何も喋らないということを知っていたから、というのもある。
「……わしは何だかんだ言ってお前のことは気に入っておる。"白椿"を使いこなせる剣士に生きている間に出会えるとは思ってもみなかったしの」
「…何だよ急に。気持ち悪ィ」
何も喋らないかと思ったら突然褒められ、本気で鳥肌がたった。
口を開けば悪態しか出てこないようなジジィから"気に入っている"なんて言われる日が来るとは…明日は槍が降るな。
「魔術師としての腕も相当のもの。銀髪云々の前に血の滲むような鍛練をしていたのは想像に難くない」
しかしジジィは俺の言葉を無視してペラペラと喋り続ける。
「…そんなわしからの忠告じゃ。この案件からは手を引いたほうがお前のためだぞ」
「何だよ急に…」
真剣な表情で言われた言葉は予想外のもので俺は瞬きをする。
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