silver wolf | ナノ




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「わしの"椿"はどんな調子だ?」

「もうお前のじゃないから勘違いすんな」

「可哀想な"椿"…血を吸い過ぎて赤く染まったが故に不吉を呼ぶ刀と忌み嫌われ…たどり着いた先がこんな男だとは…」

「お前のじゃねぇし、コイツの名前は"白椿"だ。勝手に自分の娘だとばかりに名前を変えんな。このモーロクジジィ」


イチイチうざったいことしか口にしないジジィにイライラとしつつもつい訂正をしてしまう。
"白椿"と言えばそのスジでは有名な妖刀だ。
幾多の血を浴び過ぎて赤黒い刀となり、血を求めるあまり持ち主もまた戦闘狂になり、死んでいくと言われているイワク付きの古い刀。
妖刀と呼ばれる刀は大概が何かしらの"ワケ"を持っていることが多いから、特別驚くべきものではないのだが。
力があるが故にまたクセも強く、意にそぐわない持ち手はすぐに身を滅ぼしてしまう。
まぁ妖刀も"生きて"るんだ。相手を従わせるには刀に負けないだけの力が必要なだけ。


「ふん。まだわしの半分も生きておらん小僧に言われたくないわ」

「先の短いその人生、ここで俺が終わらしてやってもいいんだぜ?特別にタダで」

「わしゃまだまだあと100年は生きる予定だから余計な世話はせんでいいわい」


このジジィならあと100年くらいなら余裕で生きていそうだから怖い。
生まれ持った魔力が強い者ほど体に寿命がきたすのが遅いというデータはすでに発表されているから…このジジィならいけるだろうな。


「それで?今日は何のようがあってここに来たんだ」


言葉遊びに疲れたのか、ジジィが話を切り出した。


「情報か?戸籍か?禁術か?それともまた裏のルートでしか流れないモノか?」

「裏ルートの情報」


――ここは闇商人オーリが経営する"何でも屋"。
信用と金があればどんなものでも揃うと言われる国屈指の"何でも屋"だ。
座れと言わんばかりに差し出された椅子に遠慮なく座ると、俺はニッコリと笑って"商談"に入った。

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