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そして、俺は別に用事もなく逃げたわけでもない。
ギイィィ―
「よォクソジジィ。まだ死んでねェか?」
「おお、そのふざけた物言い。性懲りもなくまた来たのか、銀髪の小僧」
今俺がいるのは古びた建物内の1室で、今にも崩れそうな程ボロそうな外観を裏切らない内装の部屋である人物の前に立っていた。
クソジジィ、と俺が呼ぶにふさわしいぐらい年をとったジジィはニヤリと気持ち悪く笑う。
「お前は相変わらずのようだの。お前の噂はここにまで届いておるわい」
「褒めたって金が出てくるわけじゃねーぞ」
「なら世辞を言う必要もないな」
「……相変わらず口の達者なジジィだな、おい」
見た目は完全に老人だが、中身はムカつくぐらい鬱陶しいジジィのコイツの名前はオーリ。
"表"には流せないようなヤバい商品を扱う闇商人だ。
持ち主を殺してしまう宝石だとか毎日髪が伸びる人形だとか不気味なモンばかり取りそろえている変り者のジジィだ。
だけどコイツの中には稀に"掘り出し物"も紛れ込んでいるからあなどれない。
何を隠そう俺の愛刀"白椿"はここで買ったものだったりする。
「有り難いだろ?こんなボロっちい店に客が来てくれて」
「ふん。銀髪の小僧が来るぐらいなら閑古鳥のほうがまだマシじゃ」
見ての通り口の悪ィジジィだが、その目利きは確か。
少なくともこんな路地の奥のそのまた奥に構えている店にこうして足を運んでしまう程度には、な。
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