silver wolf | ナノ




05 kanata side



「エリシアの森かー…」


ギルト"ALC(アルシ)"から出てきた俺は依頼を受けた場所の名前を呟く。
あ、"ALC"ってのはさっきのギルトの通称な。正式名称は…たぶんアイリスも知らないんじゃねーの?
結構大きなギルトだからここからの依頼は"そこそこ"信頼できるモノだと言える。
お互い完全には信じない。受ける者は依頼事項をチェックするのは当然だし、与える者もわざわざ"宣言"を行って遂行させるのだからお互い様だろうが。
BランクだろうがSSランクだろうがEランクだろうが、それは同じだ。


「こっからもう直接行くべきかなー…」


エリシアの森はここからだと…徒歩に換算すると30日程度かかる程度の距離があるが、俺ら魔術師にとってはそんな物理的距離はあまり関係ない。
中級補助魔術には"瞬間移動"なんて便利なものがあるんだからな。
一度行ったことのある場所ならそのポイントへと瞬時に移動できる名前そのままの術だ。
偶然たまたまエリシアの森には行ったことがあるからこのまま一気に行って一気に片付けることだって可能だ。


「…行く、か」


銀色の髪をガシガシとかきあげ、人気のない場所を探す。
さすがにこんな道のど真ん中で術を起動させる気はない。
ただでさえ"銀髪"ということでジロジロと見られてるんだ。術を発動させようならまず間違いなく誰かに攻撃される……もちろん、即座に反撃するけど。
適当な路地裏に入り、周りに人がいないことを確認して意識を集中させる。


「――"術式起動"」


詠唱すれば俺を中心に赤白い魔方陣が展開される。
別に言霊を発しなくても実力があれば詠唱破棄しても術は起動するが、無駄な力は使いたくないし時間がないわけでもないから普通に展開させる。
…いや、これでも大分省略はしているけど。


「"ポイントは南、名はエリシアの森――発動"」


魔方陣が一際強い光を放った後、パチンという音とともに中心に立っていたカナタを含めて消え去った。
その場には魔術が使われた残滓ともいえる粒子がはらはらと舞い、それも時間が経てば溶けるように消え去る。
路地裏には誰もいなくなり、元の静けさを取り戻していた。

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