silver wolf | ナノ




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俺達がこんなにも暴発を危険視するのにはもちろん理由がある。
魔術を扱う者として、失敗は誰にでもある。少し配分を間違えた、術式の詠唱を間違えた、それだけで大分結果は変わってくる。
だが失敗によってもたらされる被害はその術式相応のもので、周りが危ない目にあうパターンは少ない。
だけど"暴発"は違う。本人の意識関係なしに、魔力が暴走してしまう。
自身に流れる魔力を制御不能にしてしまったら――それは収束するまで、周囲を巻き込んでの大破壊が起こるのは想像に難くない。
特に初心者にその傾向が強い。


「分かるか?魔力の流れが」

「なんとなく…なんか変な感じがする」

「それが"普通"になるんだ。慣れとけ」


後ろから抱きついた状態のまま、ユウの指を紙に触れるよう誘導する。
そしてユウの指が触れた瞬間……真っ白だった紙に彩りができた。


「わ、すげ……」


当の本人も驚いたように目を見開いている。


「へぇ…面白い色だな」


紙に映った色は、赤と青の2色だが、よくよく見れば緑と茶色も見える。
つまり、系統とすれば炎と水が得意だが、風と土も少し使えるオールマイティなタイプだということだ。
たいてい2つ、多くて3つの色しか映らないから、4色こうやって色が映るのは結構珍しいことだ。
俺も自分以外でこうやって4色あるのを見るのは結構久しぶりだったりする。


「炎と水…相反する属性が全く同じ濃さなんて僕、見たことないよ!」

「そ、そうか?」


――俺はもしかしたら凄いモノを拾ってしまったんかもしれねぇな。
喜んでいるウルに戸惑いがちな視線を送っているユウを見て、ふとそう思った。

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