silver wolf | ナノ




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「で、でも俺魔力流すとか全然分かんないんだけど!」

「触ればバカでもできるぐらい簡単なものだから大丈夫!ただ流せばいいの!」

「だからその流し方が分かんないんだって!!」


まぁつい最近"魔術"という存在を知ったユウのリアクションもまぁ頷けるものもある。
言わばコイツは赤ん坊だ。図体はデカいものの、中身はカラッポの赤ん坊。
そんな奴にいきなりヤれと言われても無理だろう。
ウルも当たり前に魔術のあった生活を送ってきてるせいで"当たり前"のことをどう説明すればいいのか迷っているのが手に取るようにして分かる。
仕方がねぇな……


「―――想像するんだ」

「「カナタさん!?」」


仲良く声を揃えた2人にニヤリと笑いつつ、言葉を続ける


「例えるなら……そう、花への水やりだな。"お前"というジョウロに貯まった"魔力"という名の水を、ゆっくりと"対象物"…花に与えるようなイメージだ」


ソファから立ち上がり、ゆっくりとユウに近づき、そっと背中から抱きつく。
途端驚いたようにユウは体をビクつかせるが、全部無視。


「"水"を与え過ぎると"花"は枯れる。それを加減するのが"ジョウロ"だ。落ち着いて…指先に神経を集中させろ」


誘導させるように、意識してゆっくりと言うとユウは目を閉じて集中したのが分かった。
今の俺は"ジョウロ"を持つ"人間"だ。上手く"水"を出せるように誘導させてやらないといけない。
他人の魔力に干渉するのは疲れるからあまりやりたくなかったのだが…下手に自分でやらせて暴発されたほうが困る。


「心臓から血液を送り出すのと同じように、心から魔力を送りだせ。それを末端まで行き渡らせろ。そう、ゆっくりでいいから…」


体に少しずつ魔力が沁み渡っていくのが感じ取れ、小さく息を吐く。
ここまでこればもう暴発の心配はないだろう。
心配そうに見ていたウルもそれが分かったのか、ホッと安堵のため息をこぼしていた。

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