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「僕はねー決して人から見たら幸せじゃない人生歩んできたと思うけど、今は十分幸せだからもういいんだ」
「……その、今までのことは…」
「もちろん嫌な思い出だよ?今でも時々うなされるぐらいには、ね。でも、カナタさんがいてくれれば僕は十分頑張れる」
それは少し"依存"に似た関係に似ている気がする。
きっとウルはもうカナタさんのいない世界で生きていくことは不可能だ。体は生きてても心は死んでしまう。
「そ、っか…」
「うん。だからユウにはカナタさんはあげないからね」
「ぶっ…な、何を…!!」
シリアスな空気が勢いよく崩れ落ちる音が聞こえてくるようだ。
ニコニコと笑いながら爆弾を落としてきたウルに言い返そうにもあまりの衝撃に声がつまって言葉がでない。
俺ってこんなにもイジラれるキャラだったっけ…。自分のキャラを見失いそうになる。
「……お、俺は別にカナタさんのこと、す、好きとかそういう目で見てるわけじゃ…」
「僕、別にそういう意味で言ったわけじゃないんだけどー?」
「なぁ…っ?ハメたな!!」
思わず赤くなった顔を隠すように顔を背けるけど、絶対にバレたはず。
「ふふっ…ごめんごめん。さっきまでのは冗談。本気で勉強を始めよ?」
まだクスクス笑いながらだったが、ウルは立ち上がって本棚に収納しているたくさんの本の中から一際古そうな1冊の本を抜きだした。
……つーか俺ってこの世界の文字、読めるのか……?
言葉はあっさり通じたから何の心配もしてなかったけど、よく考えたらヤバいんじゃ…?
「取りあえず、ユウもこれからね。"リーシュウッド先生と学ぶ、生きてく上で必要な補助魔術!"。ちなみに対象年齢は幼児向け」
渡された本の表紙にはアニメのキャラっぽい魔女がニコヤカに笑っており……本のタイトルは、予想通り全くと言っていいほど読めなかった。
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