44 yu side
「うわ、本当に寝たよこの人」
全部ウルに押し付けたと思ったらもうソファで寝ているカナタさんに俺は思わずため息をつく。
まさにのび太くんもビックリの寝つきの良さだ。
そんなカナタさんに甲斐甲斐しく布団をかけながら、ウルは小さく呟く。
「カナタさんは多少なりとも心を許した人じゃないと寝てくれないよ」
「は?」
「僕らが出会った当初なんて、カナタさんは絶対に僕の前で睡眠をとろうとはしなかったもん。よくて仮眠程度。こうやって寝てくれるようになったのだって、つい最近だよ?」
「カナタさんが…」
でもそう言われれば確かにな、と納得できる。
そうは見せてないが、カナタさんは人一倍警戒心は強いほうだと思う(あくまで日本にいた俺から見た感覚だけど)
俺相手だったら例え寝てても対処できる、という自信もすこーし見え隠れしてるけど。
「取りあえず、超初歩中の初歩から教えなきゃいけないんだよね?」
「……オネガイシマス」
「別に…僕がカナタさんに教わったことをそのままユウに教えるだけだし」
その言葉に先程の話にでた男娼云々の話を思い出し、少しだけ気まずい沈黙が流れる。
俺はこういう時は全くその話に触れずにしたほうがいいのだろうか…いや、でもここで全く違う話をするのもまたおかしい気もする。
言うにしたって何言っていいのか見当もつかないけど…
グルグルグル、と考えているとクスリとウルが笑った声が聞こえ、顔を上げる。
「考えてること、手をとるようにして分かるよ」
……それほど顔に出てたんだろうか
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