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「なーんも魔術のこと知らないからさ、コイツ。向こうで滞在してる時とかでいいから魔術のイロハを教えてやってほしいんだ」
ハン、と鼻で笑ってやると何か言いたそうに口を開くも、何も発せられることなく閉ざされる。
一方突然頼まれたことにウルは驚きを隠せないようで俺とユウを交互に見ている。
「え、僕が…ですか?そんな、僕よりカナタさんのほうがずっと適任じゃないですか?」
「俺は面倒なことはやりたくないんだ」
唯一にて最大の理由を述べると途端納得したように頷くウル。
……まぁ、それだけ俺のことよく分かってくれてるってことだよな、うん。
「なぁウル…俺、本当に全く何にも知らないけど…ぜひとも教えてください!!」
最後は叫ぶように言った後、勢いよく頭を下げたユウを見てウルは慌てふためく。
まぁ年上にあんな風に頭を下げられるなんて経験、ウルにはなかっただろうし…正直俺も驚いている。
まさか他人にここまでするとは思ってもみなかった。ニホンではこれぐらい当たり前なのだろうか?
俺だったら絶対に年下の奴に頭下げるなんて無理。そんなことするぐらいだったら死ぬ気で自力で解決する。
「……まぁ、そこまで言うなら…。僕でよければ相手するよ」
「マジで!?ありがとーウル!!」
本当に嬉しかったのか、ガバッと自身より小さいウルを抱き締めるユウ。
「つーか人のモンに勝手に手ェ出してんじゃねーよ」
「い…っ!!いいじゃねぇかよこれぐらい!!」
当然ユウを蹴飛ばしてウルから離したが、これまた当然のようにユウから文句を言われる俺。
「うっぜ。とにかく出発は1週間後。それまでに死ぬ気でウルから魔術を教わっとけ。俺は疲れたから寝る」
「放置反対!!」
まだ何かギャーギャー言ってるようだったが、全てシャットアウトして定位置のソファに寝転がり、ゆっくりと目を閉じた。
――カナタはさ、俺のモノ…だよね?忌々しい奴の声が聞こえた気がした
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