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「ユールグール。まぁ少なくとも向こうはそのつもりだろうな」
「それ、って結構ヤバいんじゃ…?」
「普通に考えればあんまり喜ばしい状態じゃあねぇな」
"雉"を退治するまではまさにチヤホヤされて命の危険なんてサラサラないが、無事依頼を終了させた後、奴らは手のひら目の色変えて俺らを殺そうとしてくるはず。
「当然俺はあんな奴らに殺されてやる義理は全くないから別にいいんだけどな」
浮かべていた火水風の球体を一瞬で手の周りから消し、俺は2人を見る。
「まぁウルを守るついでにユウのこともそれなりに守ってやるから安心しな」
「俺はついでかよ!!」
少し意地悪なことを言えば案の定目の色変えて食ってかかってくるユウに思わず笑みが零れる。
見ればウルも必死に笑いそうになるのを堪えていて、その小さな肩がブルブルと震えている。
「ぶっ…あっはははは!お前って思ってた通りの反応をするんだな!あーもー腹いてぇって…っ」
「ふ……っふふ……」
「お前ら失礼すぎるから!特にウル!お前は笑いを殺し切れてねぇから!!」
この中で一番デカい図体してるわりに子供っぽいというか…変にスレてないというか…
スレてねじれてどうしようもなくなった俺とは大違いだ。
きっとコイツの親を含め、環境が良かったのだろう。幸せに、毎日笑っていられる程度には…
俺らが想像すらできないような、そんな環境で……。
「文句は強くなってから言うんだな」
そう言えば案の定言葉につまるユウを見て、俺はまた小さく笑った。
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