silver wolf | ナノ




40 kanata side




"狼"なんてもう二度と聞きたくない。
だからさりげなくを装って変えた話題にウルには少し感づかれたようだったが、平静を装えばその疑問もかき消える。


「"雉"の各個人の実力はそう凄いわけじゃねェ。問題はその数の多さだ。下手くそな炎弾(えんだん)も数撃てば当たる、ってハナシ」


ビー玉サイズの炎の塊をつくりだして人差し指の上に漂わせてて遊びながら説明を続ける。
俺1人だったら別に"雉"の雑魚共が何人束にこようとも負ける気はサラサラねぇ、が…ウルやユウにとっては話が違う。
特にユウなんかはそれこそ瞬殺されるだろう。


「それにだな、この話にはキナくさーい裏もある」

「裏、ですか…?」

「そうだ。この程度の任務なら何人かチームを組んでる奴ら複数に頼めばいいと思わないか?」


いくら今をときめく"雉"の退治だとはいえ、それなりの実力でチームを組んでいる奴ら複数に頼めば何とかなるのかもしれない。
それにこのあの街の相場を考えれば異様なぐらい高額な報酬――…しかも成功報酬のみで、前払い等は一切ない。
そこにあの街の住人らの性格を考慮して考えれば、自然と答えは導き出せる。


「まさか、この依頼……」

「そうだ。この依頼の目的は"雉"の討伐ただ一つ。カネも払いたくないし、あの街の秘密を知った奴らも外には出したくない……"雉"相手に消耗した俺らを一網打尽にして潰そうって魂胆が透けて見えると思わないか?」


中指に風を封じ込めた球体を浮かべ、俺はニヤリと笑う。
"雉"を討伐し終わった後、俺らが"不慮の事故"によって死亡すればユールグール側はギルドに金を支払う義務はなくなる。
高い金で人材を引きよせ、使い終わった後はまるでゴミのように捨てる……まさにあの街らしい思考だ。
小指に水の球体を浮かべ、ゆらゆらと3つの球体に閉じ込めた元素たちを眺めているとユウが恐る恐るといった様子で聞いてきた。


「……つまり、俺らはそのユー…なんとかって街に行けば殺されちゃうってことか…?」


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