silver wolf | ナノ




04 airis side



「あーあ。行っちゃった」


カナタの姿が完全に見えなくなった後、アイリスは残念そうに呟いた。
彼の姿が見えなくなると今まで静まりかえっていた室内にざわめきが戻る。
そのあからさまな反応に思わず鼻で笑いそうになったがキャラじゃないことを思い出し止めておく。
だが、彼らの反応が分からないわけではない。


「あーんなにカッコいいなんてズルいわよねー…」


カナタ自身はあまり気にしてないようだが、彼の容姿は非常に整っていた。
例え片目を白い包帯で覆っていても、その美貌は衰えていない。
年の頃は20代前半。体つきも筋肉質とは言えず、女ほどとは言えないがやはり男性としては細身だと言える。
魔族にとって容姿はその者の強さを図る一種のパロメータだ。
強ければ強い程その容姿は整っており、逆に弱い者は人型にすらなれていない。
もし彼が魔族だったらかなり強いことが容易に分かるカナタだったが、人々が遠巻きに彼を見る理由はそれだけではない。
最も大きな理由、それは彼の髪の色にあった。


「なぁなぁアイリスちゃん、何で銀髪の奴なんかと話してるんだよ」

「あら。私は色で人を判断しないわよ?」


顔馴染みの客の1人が恐る恐る聞いてきた言葉にわざとらしい程の笑みを浮かべる。


「ほらほら、頼んでた依頼はどうなったの?」

「あ、あぁ。ちゃんと終わらしてきたぜ」


Dランクの薬草集めを、ね。


「そう、お疲れ様。"ここに契約が無事遂行されたことを宣言します"」

「"了承だ"」


意気揚々と報酬を受け取って立ち去っていく男をため息とともに見送る。
最近あーゆう小金稼ぎ感覚でしか依頼を受け取らない人間が増えたせいで一向に高ランクの依頼がさばけないのだ。
魔族の脅威もまだ去ってないっていうのに…嘆かわしいことだ。
きっちり1週間たってから現れるであろう銀髪の彼のことを思い出し、小さく頬を緩ませた。
――あと10年若かったら何が何でも捕まえてたんだけど、ね。

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