silver wolf | ナノ




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「盗賊の名は確信はないが恐らく"雉(きじ)"だろう。盗賊の手に赤い鳥の刺青を見た奴がいるらしい」

「え、あの"雉"が…!?」


"雉"という単語に思わず耳を疑う。


「何だ何だ、そのキジって」

「あーもー本当に何にも知らないんだね、ユウは!"雉"って言えば大規模で有名な盗賊団に決まってるじゃない!」


"雉"は今色々なところで騒がれている盗賊団で、やりたい放題好き勝手に街を荒らす奴らが集まってできた集団だ。
標的はお金から人間まで幅広く、構成員も多くて今一番警戒されているといっても過言ではない。
あの街はそんな厄介な奴らに目をつけられていたとは……まぁハッキリ言えば自業自得だけど。


「最近では一番の出世株ですよね。少し前までは"狼(ろう)"がダントツでしたけど」

「"狼"、ねぇ…」

「ロウ?」

「…呆れた。本当に何も知らないんだね」


"狼"といえば少し前まで世間を大きく揺るがしていた盗賊の名前だ。
所謂"はみ出し者"の集まりだったようで、銀持ちや魔族もいたらしい"狼"は"雉"とは違い小規模なものだった。
少数精鋭、という言葉がピッタリで少ない人数で小さな国を一つ落としたという噂まで流れているぐらい強い人の集まりだったらしい。
だがそんな彼らも数年前に突如姿を消し、今は"狼"に憧れを抱いた奴らが世間を騒がしている、というところだろうか。


「……まぁ今は"狼"より"雉"だ。俺らは奴らの頭を捕獲しなくちゃいけねぇんだ」


あっさりと話題を元に戻したカナタさんにどことなく違和感を感じてチラリと見てみるも、いつも通りで気のせいかと意識をもとに戻す。
そんな僕をカナタさんがジッと見ていたことなんて全然気づかなかった――…

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