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「Aランクってそんなに難しいモンなのか?」
「そりゃお前が瞬殺されるぐらいには難しいな」
「それってかなり難易度高いじゃん!!」
恐ろしい恐ろしい…と1人ブツブツ呟いているユウ。
っていうかこの人本当に何も知らないの?依頼のAランクなんて子供が聞いても震え上がるぐらいなのに…
この無知さ加減は"世間知らず"というレベルをはるかに超えている。そう、まるで…どこか全く別の世界から来てしまったかのように……
「……ねぇ、カナタさん…」
「何だ?」
カナタさんは僕がこの確信にも近い疑問を抱いているということに当然気づいているはず。
それでも何も言ってこないということは、踏みいられたくないことなんだと考えるべきだろう。
「……いえ、何でもないです。それで依頼内容は何なんですか?」
「盗賊退治だ」
だから何も聞かないでおこうと話を変えると、僅かに唇の端をあげてカナタさんは話を進める。
別にカナタさんがいいと言ってるなら例えそれが魔族であろうと僕は絶対に否定しないという自信があるし、ユウなら(不本意だけど)気があいそうだし、多少秘密があっても気にならない。
「盗賊、ですか?」
「最近になって出てきた奴ららしいからお前が知らなくても別におかしくないな」
確かに僕のいた頃は盗賊なんて全くいなかった。
あの街は他者に深入りされることを何よりも拒むことで有名で、大抵のことは街の者で何とかしようとする。
度々窃盗などはあったが、どれも全て街の人間が見つけ出し、独自の法で罪人を葬ってきた。
そんな人たちが、外の人間に依頼を頼むということは…相当強いのか大規模なのかのどちらかだ。
…Aランクということにも高額な報酬にも納得いく程度には。
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