silver wolf | ナノ




34



「―――"契約に反する行為、思考に相応の報いを"」


だから俺は最終手段に打って出た。
コレをやれば当分ウルが使い物にならないと分かっているから使いたくなかったのだが……仕方がない。
力ある言葉を口ずさめばウルの表情がサッと変わった。
契約不履行――"血の契約"を破ろうとすれば、その代償もまた大きい。


「う…っ」

「あ、おい!どうしたんだ!?」


突如耳元をおさえて苦しみだしたウルに慌ててユウが駆け寄ろうとしたが、俺はそれを手で制する。


「何してんだよ!ウルを助けねぇと…!」

「その必要はねぇよ。これは"血の契約"に反したことをしようとした罰なんだからな」


そう、これは"血の契約"に基づいた正当は報復で第三者に立ち入れる余地はない。
ユウとの間に交わした"血の契約"を、実はウルとの間にも交わしていたのだ。
ウルが"外"に出たいと言った時に、俺は"契約"を交わした。
ウルは俺に全面的に協力することを確約し、俺はウルをあの街から解放する、という"契約"を。
その契約はウルが俺に買われた金額を全額返しきるまで有効となるもので…今はまだ家の購入代金を払ってもらってる最中だから解放されるのはまだまだ先の話。


「忘れてねェだろ?お前はまだ俺の"モノ"だってことを。この契約を飲んだのはお前だ、ウル」


自分の髪をかきあげ、右の耳たぶに光る小さな紋様を見せれば唇をかみしめてウルは目線を反らす。
全く同じモノが自分の右耳たぶにあり、それが今激痛を生んでいるのだからまぁ当然といえば当然の反応だが。
基本的にウルは"血の契約"があろうとなかろうと協力的で、俺も無理に何かをさせるようなこともなかった。
プライドの高いウルだから小さく震えているだけだが、本来なら絶叫して転がりまわっていてもおかしくない程の激痛のはずだ。


「残念だけどお前に拒否権はねェよ。この件に関しては…な」


嫌がられようが拒否られようがこれはもう決定事項だ。
その俺の言葉にウルは小さく頷くことで了承したのだった。

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