30
「どうするって…そのユー……なんとかっていう街に行くんだろ?」
「ユールグールな。お前本気であの歓楽街に行く気か?」
「?だって依頼受けたんだろ?」
あぁ受けたさ。断りきれずに無理やりな。
本当に危機感ねーなぁコイツ。ニホンってそんなに平和な国だったのだろうか?
…コイツは1回痛い目みたほうがいいのかもしれんな。悪意で言ってるわけでなく、本心から。
「…ていうか今どこに向かってるんだ?」
「ウルんとこ」
「ウルの?」
ユールグールは快楽を他人に提供する夢のような場所だが、それ故に敵も多い。
枕もとでポロリとこぼれた秘密を聞いてしまったがために命を狙われるようなことなんでザラだ。
だからこそあの街は自分たちで何でも問題を解決してきた。狙われた子がいたら自分たちで守り、また反撃をする。
極力外の世界の力を借りないようにしているユールグールが、ギルドに依頼を任すなんて余程手を焼いているという証だ。
「あの街は特殊だ。外のモンが足を踏み入れても煙に巻かれて終わり。だからあの場所に踏み込むには"身内"が必要になってくる」
本当は気が進まないのだが…こればかりは仕方がない。
今一番近くにいて一番あの街に最近までいた奴、といったらアイツしかいないのだから。
「ウルは半年前まであの街で男娼をしてたんだ。だから情報も比較的新しいし、役に立つ」
「アイツが…!?」
驚いたように呟いたユウを見ることなく足を進める。
「半年前、俺はアイツを5,000リオンで買ったんだ。SランクとAランクの任務をこなして金をつくってな。だからアイツは外の世界にいられる。俺の"協力者"となる代わりにな」
.
[ 57/146 ][*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]