silver wolf | ナノ




03



「……ま、大丈夫だな」

「そう?じゃあ登録するわね」


一通りチェックして不審な点がないことを確認するとアイリスが自身の手のひらを俺の前に差し出した。
俺はその細い手に自分の手を重ねる。


「"ここに契約の締結を宣言する"」

「"了承した"」


コトバを紡ぐと確かに先程まで見ていた紙が燃えて跡形もなく消え去る。
それと同時に俺達の手に紋様が浮かび、赤く光ったあとそれは何事もなかったかのようになくなった。


「はい完了〜。期限は今から1週間!頑張ってねぇ」

「はぁ…メンドくせ」


今行ったのはごく一般的に使われている"宣言"と呼ばれる基本的な補助魔術だ。
言霊により交わした誓約を"宣言"し、"了承"することで片方が放棄すればそれ相応の罰が与えられるようにした魔術で取引の際によく行われている。
浮かび上がった紋様は目に見えない契約書のようなものだ。契約が履行されればそれらは消える。
大きく分けて攻式と守式、そして補助に大別される魔術の中で、補助系は誰にも使えるぐらい基本的なものが多い。
学校で一番最初に習うのも確か補助系だった気がするぐらい一般的なものだ。
しかし補助系だけ習得してもこの世の中を生きていくことは難しいのだが。


「次来る時はとっておきのSランクの諜報系のを用意して待ってるから」

「戯言は自称年齢だけにしとけ。諜報なんて面倒なこと、俺には向いてねェって」


髪をガシガシとかきあげてげんなりと呟く。
何でもAランク以上を任せられる人間というのは案外少ないらしく、気がむいたときにフラリと寄る俺にもやってもらわなければいけないぐらい人手不足らしい。
俺はチマチマとした作業よりも大ざっぱにやれることのほうが好きだから本当に頼まれた時以外はやりたくないし、やらない。


「じゃ、行ってくるわ」

「はーい。またね」


ニコヤカに手を振るアイリスをチラリと見たあと、カツカツとブーツの音を響かせてそのまま店を出ていった。



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