silver wolf | ナノ




29 kanata side




ぶっちゃけ今の俺はかなり機嫌が悪い。
面白い玩具を手に入れ、アイリスから余分に金をふんだくってイイ気分だったのに、今はもう底辺だ。
ユールグール…あの歓楽街にはなるべく行かないようにしてたというのに…


「待てってカナタさん!」


後ろから聞こえてきた声に、ようやくユウの存在を思い出して歩くスピードを緩めた。
結構早く歩いていたらしく、追いついてきたユウは肩で息をしている。


「トロイと置いてくぞ」

「カナタさんが、早すぎる、んだって!」


ようやく呼吸が整ってきたらしいユウの歩くスピードに合わせて仕方がないから歩いていく。
コイツをユールグールに連れていくのはさすがに可哀そうというか…少しだけ抵抗がある。
昼間だろうが外だろうがあそこではいつもどこかで誰かがヤっているような場所だ。
コイツは顔立ちは整っているが何しろ弱すぎる。俺と一瞬でも離れればその瞬間コイツは金はないけど性欲が有り余っている奴らの餌食だ。
一般市民向けの娼館ならまだ安いが、"上物"ばかりを取りそろえたところはそれなりに値は張る。
値段も"商品"もまさにピンキリだ。
娼婦もいれば男娼もいる。熟女もいればまだ幼い子供だっている。顔立ちの整った奴もいれば当然そうじゃないやつもいる。
明らかに上物クラスで、金を出さないでも思いっきりヤれるとあれば男たちは群がるだろう。
そう背が低いわけではないのだが、世の中には色々なクセを持つ人間がいる。ヤられるときはヤられるだろう。


「……どうしよっかなー…」

「何が?」

「お前をどうしようかと思って」


こっちは結構真剣に悩んでやってるというのに当事者のユウはボケっとアホ面をさらしている。

.

[ 56/146 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -