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「俺がその依頼を蹴ったとしても他のを出す気はねぇんだろ?」
「あら、よく分かったわね」
「依頼主まで暴露しといてよく言うぜ」
疲れたように前髪をかき上げたカナタさんは渋々といった様子でその依頼を受け取った。
本当にやりたくないのか、本当に嫌そうな顔をしながらだけど。
「本当?助かるわぁ。高ランクだし依頼主がアレなものだから中々受け手が見つからなくて困ってたのよね〜」
「ユールグールにはなるべく行きたくなかったんだけどな……」
ポツリと呟いた後、カナタさんは自分の手をアイリスさんの目の前に差し出す。
それにアイリスさんは手を重ね、言葉を紡いだ。
「"ここに契約が締結を宣言します"」
「"了承した"」
すると紙が消え失せ、代わりにあの赤い紋様が2人の手に浮かび、それもやがて消えていった。
これが、"宣言"…
「期限は特になし。アタマを潰したら終了よ。頑張ってね、カナタくんとユウくん」
「行くぞユウ」
「あ、うん」
何も言わずに席を立ったカナタさんにつられるよう席を立ち、取り敢えずアイリスさんに小さく礼をして慌ててカナタさんの背中を追った。
「じゃあね〜」
あくまでもニコヤカに笑うアイリスさんの声を聞いて、俺たちはギルドから出て行った
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