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「依頼だけど、何か楽だけど羽振りのいい奴あるか?」
「そんな夢のような奴があったら誰も苦労しないわよ」
呆れたように溜息をつき、アイリスさんは分厚いファイルを手にしてパラパラとめくる。
「んー…そうねぇ…うーん…あ、これなんかどうかしら?」
その分厚いファイルから1枚の紙を取り出し、俺達の前に差し出した。
「討伐・護衛系、場所はユールグール、ランクはA、報酬は2,000リオン、内容はそこで今活性化している盗賊の壊滅」
「盗賊、か…」
ポツリとその単語を呟いたカナタさんの声がいつもと少しだけ違う気がして思わず彼を見る。
だけど俺が見た時はいつも通りの、少し面倒くさそうな顔をしていたからアレはきっと気のせいだろう。
「それ以外で何かねぇ?」
「あら、これはあまり乗り気じゃないのね。これ、実は街のボスからの依頼であまり断ってほしくない筋のヤツなんだけど…」
「ユールグールのか?となると余程手を焼いてるんだな。あそこの街のモンは他人を自分たちのシマに入れたがらないってのに」
僅かに驚いた様子のカナタさん。
ゆーるぐーる、なんて変な名前の街はそんなに特殊な場所なのだろうか…?
「…なぁカナタさん、そのユールグールって…?」
「別名不夜城ユールグール。眠らない街、平たく言えば歓楽街。娼館が所狭しと並ぶ、そんな場所だ」
「ユウくんにはちょーっとまだ早い場所なのは確かよねー」
「お、俺だって…!」
誤魔化すように大きな声を出したが、逆にそれがアイリスさんの言葉を裏付けしているのだと気づき口を閉ざす。
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