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「あの子がウルくん以外の人と一緒にいるなんて、本当に珍しいことなのよ?」
「そうなんですか?」
「そりゃあもう!ウルくんと2人でいるのはたまーに見るけど、それもあくまで仕事の延長線っていうか…あなたみたいにただ傍に置いてるの、私初めて見たわよ?」
ふふっと笑うアイリスさんの顔はまるで手のかかる息子を持つ母親そのものだ。
「銀髪だから彼、魔術の腕は折り紙つきだし剣の腕もピカイチ。おまけにあの容姿で、銀髪のわりにオカシイ場所も見つからない。お陰で影ではあの子、結構人気あるのよね」
「…すごいんですね、カナタさんって」
「うちのギルドにとってもいい取引先よ。完全実力主義を謳ってるウチでもカナタくんレベルの人はそうそういないもの」
つまり、カナタさんは本当に"強い"人なんだ。
もしカナタさんが銀髪じゃなかったら…きっと今頃、街の人気者になっていただろう。
「ユウくんの目も少し銀色っぽいのね。今まで嫌な思いもしてきたでしょう?」
「いや、俺は…」
安易に銀色がいいと言った少し前の俺が凄く恥ずかしい。
何も考えずに銀色がいいと言った俺を、カナタさんはどんな思いで聞いてたのだろうか?
「……なんで銀色がいけない色なんでしょうね。カナタさんの髪、凄く綺麗なのに…」
「世の中にはそう思えない、可哀想な人がたくさんいるだけのことよ。ユウくんが気にする必要はないわ」
ニッコリと笑ったアイリスさんにつられて俺も小さく笑みを浮かべる。
まるで日本にいる母さんみたいな人だ。顔立ちとか年齢とかは全く違うけど、雰囲気が。
「……何2人して笑ってんだ?気色悪ィ…」
電話が終わったらしいカナタさんに嫌そうな顔で見られたけど、今の俺はそんなこと気にならない。
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