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ピリリ、という軽い電子音がカナタさんの…胸元あたりから聞こえてきた。
「あ?誰だよこんな時に…」
途端不機嫌そうに呟いたカナタさんは首元から見えていた細いネックレスをたぐりよせて…その先についていた白っぽい宝石?を手のひらにのせた。
日本で売ってるような安っぽい似非宝石じゃなくて、原石そのものの…手のひらの余裕で乗るサイズの綺麗なものだった。
その宝石乗せた手とは反対の右手でカナタさんはクイッと何かを引き抜く動作をすると、あら不思議。その動きのままに、明らかに大きさが違う携帯が出てきたのだ。
驚いて口をポカンと開けてそれを見ている俺に対してカナタさんもアイリスさんも至って普通。
摩訶不思議なことを引き起こしたあの宝石をまた服の下に隠し、カナタさんは携帯を持って席を立った。
「ちょっと待ってろ」
「あ、あぁ…」
そのまま誰かと電話しながら立ち去って行くカナタさんの後姿を茫然と見送っていると、クスクスと笑い声が聞こえてきた。
「ふふっ。そんなにカナタくんが好きなの?」
「えぇ!?お、俺はそんなんじゃ…!!」
あらぬ誤解をしているらしいアイリスさんに慌てて弁明しようとするもアイリスさんは笑って首を振る。
「冗談よ冗談。ちょっとからかってみただけよ〜。ユウくんって弄りがいあるわよね〜」
「冗談、っスか…」
「でもユウくんのカナタくんを見る目ってなんか産まれたばかりの雛鳥が親鳥を見る目に似てるのよねぇ。この人しか知らない!ってかんじのさ」
鋭い…
ははは、と取りあえず笑っておいたがそれで本当に誤魔化せたかは疑問だ。
さすがカナタさん相手に一歩も引かない女性、というべきか。
「でもねぇ、ユウくん」
内緒話でもするようにアイリスさんは声の音量を落とした。
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