silver wolf | ナノ




02


アズウェラ国。
それは今俺がいる国の名前でもあったし、ある意味世界の名前でもあった。
ここではアズウェラよりも大きい国なんか存在しないし、張り合える存在すらない。
アズウェラが潰そうと思えばいつでも潰せるような小国しかないここではアズウェラ神同然だろう。
……いや、それは数年前まで、の話だが。

その世界唯一の"元"超大国であるアズウェラだったが、治安はすこぶるよろしくはなかった。
強盗や殺人、強姦爆破…数えていたらキリがないくらいの犯罪が日夜そこらじゅうで起こっていた。
強姦に男も女もない。その気になれば超高等魔術だが男を孕ませることだって可能なのだ
力なき者が生きるには辛い時代であることは確かだ。


「はい、これなんかどーお?」


もの思いにふけっていた俺の意識をアイリスが引き戻す。


「討伐系。報酬もそこそこ高額。エリシアの森で出ている大量のスライム状のモンスターの討伐。難易度はBね」

「Bかよ…せめてAランク以上だろ」

「無理ね。ランクをあげたらもうほとんど護衛か諜報系。討伐系もあるにはあるけどどれもかなり面倒なものばかり」

「……マジかよ」


そしてここはギルドと呼ばれる、所謂依頼仲介所だ。
俺のようなどこにも雇われていないフリーの人間はこういう各地にあるギルドから仕事をもらい、それをこなすことで報酬を得ている。
任務も各難易度ごとに仕分けされており、ギルドの人間の判断によって最高に難しい(面倒くさい)SSからS、A、B、C、D、そして初心者向けのEとランク分けされた依頼の中からふりわけるのだ。
依頼内容も分かれており、魔物退治などの討伐系と要人の護衛や機密事項の入手などの諜報系のだいたい2種類に分けることができる。


「……分かった。それで手ェ打つわ」

「まいどあり」


ギルド側としても優秀な人間を確保しておくことはとても大事なことで、ぞんざいな扱いをすればすぐに他のギルドへと移られてしまう。
俺の担当のこのアイリスも見た目は普通の女だが、それなりにやり手に分類される奴だ
簡単な依頼内容を確認し、特に不審な点がないかよくチェックする。
依頼の中には誤魔化して厄介なのを忍ばせているのもあり、それが原因で知り合いも何人か帰らぬ人となっている。
このご時世、なんでも疑ってかからなければ生きてはいけない。



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