19
「あら珍しい。あなたがウルくん以外の人と一緒にいるだなんて」
「は、初めまして…うづ…じゃなくてユウです」
危うく卯月勇太と名乗ろうとしてしまい、慌てて言い直す。
この世界にいる間は少なくとも俺の名前は"ユウ"なのだから。
「あら、礼儀正しいのね。私はアイリス。歳は19でココでカナタくんの担当者をやってまーす」
「え、19…!?」
「嘘に決まってるだろ。騙されんじゃねーよ」
確かにいくら若くて可愛いといっても明らかに19歳なんかではない。
一瞬驚いてしまうもカナタさんに言われて落着きを取り戻す。
「やだぁもう。19歳って言ってるでしょ?」
「そうだな、数年前からずっと19歳だと言ってるからよーく知ってるよ」
呆れたように溜息をついたカナタさんからはもう先程の怖い雰囲気は少しもでていない。
きっと…あの時アイリスさんが止めに入ってこなかったら、カナタさんはあの男を何の迷いもなく殺していたと思う。
素人である俺から見ても、あの男たちとカナタさんの間には絶対的な力の差というのが存在していた。
「でもアナタも顔立ち整ってるわね〜。私ったら両手に花状態じゃない!」
「俺なんてそれほどですよ」
「うーんカナタにはない謙虚さもまたイイわね!」
「ウザいこと言ってないでサッサと金をよこしやがれ」
少しイライラしてきたカナタさんにも怯えることなくアイリスさんは肩をすくめる。
「はいはい。私が少し席をはずしていた間に騒ぎを起こしてくれたカナタくんにだってちゃーんと報酬を渡すわよ、ちゃんとね」
……あの光景を見た後でこんなことを言えるアイリスさんがとても頼もしく見えてきた
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