08 kanata side
ウルとはかれこれもう1年以上の付き合いがある、けっこう古くからの知り合いだ。
小さいナリして魔術師としての腕はよく、面倒くさい依頼を受けてしまった時はコイツと組んで片付けることにしている。
俺の魔術系統は"破壊"しかなく、攻式はほぼどの属性も扱うことができるが守式は苦手で、滅多なことでは使わないようにする程嫌いだ。
攻撃は最大の防御って言うだろ?
その点ウルはどっちかと言えば攻式よりも守式のほうが得意な奴で、俺が暴れてる間被害が出ないよう結界を張ってもらっている。
何よりも癒術が使えるのがデカい。
「ほら、さっさと着替えろ」
ウルが持ってきた服をユウに投げ渡す。
あんな機能性の悪い真っ黒の服を着ているのを見られたら速攻で見世物小屋に売り払われるのがオチだ。
色素が一気に薄くなった目は術をかけた自分自身でさえ少し違和感を感じるが…まぁ時間が経てばそれもなくなるはずだ。
「えーっと…着替える場所って…」
「バカか。こっから出れないからウルに服を取ってきてもらったんだ。どっか行けるわけないだろ」
「う…」
服を持ったままウロウロしていたユウは俺の言葉にガックリと項垂れる。
別に今からヤるとか何にも言ってないんだからサッサと着替えればいいのに…本当にコイツは化石だな。
名前をユウじゃなくてカセキにでもしてやればよかった。
「ねぇねぇカナタさん、何でこの人拾ってきたんですか?」
「んあ?」
俺がユウを見ているのが気に食わなかったのか、ウルが注意を自分に向けてほしいとばかりに話しかけてきた。
この健気で可愛い16歳の少年にゆっくりと笑いかけると頭の上に手をおいた。
ユウを拾ってきた理由なんて1つしかない。
「暇つぶしだ」
人生という長い時間の暇つぶしの相手には異界人なんてちょうどいいだろ?
。
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