05
「へぇ〜。ってことはお前んとこの世界とこっちはそんなに科学の発達に変わりはないんだな」
「いや…たぶんあっちのほうが進んでる気がするな…」
高いビルに囲まれ、アスファルトの地面を歩きながら学校に行っていた。
結構な都会に住んでいたせいもあるかもだけど、あそこの空気は排気ガスとかで酷く汚れていた気もする。
便利だけどどこか自由じゃない生活。
「ふーん…こっちは基本魔学メインに進んでるからな。科学はそれを補う程度あれば問題ねーから仕方がないけど」
確かにこれだけ魔術が頻繁に使用されていたら科学なんて二の次になるだろう。
俺的にはケータイすらも何だか魔術を見た後ではミスマッチに思えてくる。
「―――あ、もしもし?あぁ、久しぶり。元気にしてたか?」
カナタさんは顔を柔らげて少しだけ楽しそうに電話の相手と喋りだした。
当然俺は蚊帳の外となるわけだが仕方がなく会話が終わるのを待つ。
「いや、今日は依頼じゃねーんだ。ちょっとお前に頼みたいことがあってな。…あぁ、ちょっとメンドーなことになってな。服を一式用意して欲しいんだ。サイズは…俺と同じで大丈夫なはずだ」
どうやらカナタさんは電話の相手に俺の服を用意するようお願いしているようだ。
「え?いやお前んとこに俺の服があるだろ、何着か。それでいいから持ってきてくれ。また泊まるとき用に服持ってくから」
…ん?
「だーかーら、別にそういう相手なんじゃないって!もし仮にそうならお前に頼むわけないだろ!?変な嫉妬すんなって」
んん!?
「とにかく、今すぐお前は俺の服一式持ってこい。場所は商店街の端の路地だ。いいな、頼んだぞ」
はぁ、と疲れたような溜息をついて電話を切ったカナタさんを俺はまじまじと凝視してしまう。
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