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「"破られぬ誓約を交わす、その望みを述べよ"」
「…お、俺は柚樹を、坂下柚樹を取り戻したい。そのための力を得たい」
「"その望みは受け入れよう。等価交換、俺の望みは――享楽の提供"」
ユウタの手を掴んで俺の心臓の上にあてる。
その瞬間、鋭い痛みが走り2人揃って顔をしかめた。
だがこれは成約した証拠。
お互いが納得し、理解して相手の要望を受け入れたということ。
「"今ここに制約は交わされた。これは[カナタ]と[ユウ]の誓約であり制約。破ることは許されない、血の誓約――"」
終節まで言い終わった後、俺とユウタの心臓の上にお揃いの紋様が浮かび上がった。
これでもうこの契約が破られることはなくなったというわけで、この赤い紋様は言わば体に焼きついた契約書。
"宣言"とは違い、この"血の契約"は契約が果たされるその瞬間まで紋様が消えることはない。
初級補助魔術である"宣言"の上位魔術に当たるのが、この上級補助魔術である"血の契約"だ。
「…おわ、ったのか?」
足元で光っていた魔方陣が消滅したのを確認したコイツが恐る恐ると言った様子で聞いてくる。
「まぁな。これでお前は俺に"享楽"を提供し、俺はユズキって奴を取り戻すことに協力することになったってわけ。破ったり拒否したらめっちゃ心臓が痛むから」
「…まじか」
青白い顔で服をまくり己の胸にできたソレを眺める姿にクスリと笑うと、言い忘れたことがあったことを思い出した。
「そうだ、忘れてたが今からお前の名前はウヅキユウタじゃなくて"ユウ"だから」
「は?」
「ユウタってなーんか呼びにくいからさ、さっきの"血の契約"の時にコッソリと変えてみましたー」
ちょっとお茶目に言ってみたらユウタ…いやユウがイキナリ怒りだした。
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