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「そう、確かにお前をこっちに飛ばしたのは補助魔術で間違いない。だけどその補助ん中にもいくつか"難易度"がある」
「難易度…」
「そうだ。初心者向けの初級から中級、上級…そして特級の4段階がな」
そこでカナタさんは表情を一転させる。
「お前をここに送った術は"界渡り"と呼ばれている、特級補助魔術だ。異界からモノを召喚する、この世界でも片手で足りる程度にしか扱えることのできない特級魔術の中でも特に難しいとされている術だ」
真剣な表情で言われた事実を頭の中で繰り返し呟く。
つまり、俺たちをここに呼んだ奴は、かなりすごい魔法使いというわけで、俺を元の世界に戻せる人もこの世界でも片手で足りる程度しかいないということ。
「ところでお前、エリゴールに名前を聞かれただろ?」
「名前?…あぁ、確かに」
随分格式ばった問いかけだったが、確かに内容は"名前を教えろ"だった気がする。
確かそれに応えることはなくそのまま気を失ったような気がするが…それが何かあったのだろうか?。
「名前を言う前に…その、気ィ失っちゃったんで…」
「正解だ。名前を言ってたらその瞬間エリゴールとの間に契約が結ばれたことになってお前は今頃アイツの籠の中だったぞ」
「え!!じゃあ俺かなり危なかったんですか!?」
「さすがの俺も契約を交わしてたらどうにもできなかったな。アレの厄介なことは例え偽名だとしても"名前"を口にすればそれが"本名"になっちまうところだ。気絶してよかったな」
本当だ。神様ありがとう。そしてあそこで気絶した自分、グッジョブ!
「となると今お前の傍にいない親友とやらは名前を名乗ったんだな」
「な…っ柚樹が!?」
「ユズキ?」
カナタさんの声が僅かに鋭くなったのに気づかず、俺はバカみたいに取り乱していた。
。
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