19
この銀髪の美人はカナタと言う名前らしい。しかし23歳とは…俺よりも5つも上だということに少し驚く。
せいぜい20歳ぐらいだと思っていた。
「お前とその親友とやらはジジィ…もとい術者によってこの世界へと飛ばされてきたようだ」
「お、俺ら元いた場所に戻れるんすか!?」
「さぁ…特級な上に闇まで絡んでいるとなると俺にも分からん」
「とっきゅう…?」
よく分らない単語を俺がオウム返しのように呟くと、面倒くさそうにカナタさんはため息をついた。
「なーんにも分かんねェんだよな、お前は…面倒くせェ。いいか?説明してやるから一回で覚えろよ?ここにはだいたい3種類の魔術がある」
ピッと3本の指が俺の前に突き出される。
「1つが攻式。文字通り攻撃タイプの魔術で俺がさっき使った"血桜壱ノ式"も攻式の中の炎術だ。2つ目が守式。これも文字通りのもんだと思ってくれて問題ない。そして3つ目が補助だ」
最後の1本となった指をゆっくりと折り曲げる。
「補助も文字通り基本的なことだ。攻撃でも守備でもない術はたいてい補助の括りに入れられることになる」
「…ということは、俺たちをこっちに飛ばしたのは、その補助魔術ってことですね」
あれは俺達を攻撃するためでもなく、自分の身を守るための術じゃない。残った補助のものだと言えば僅かにカナタさんの目が丸くなった。
だがそれは一瞬で、カナタさんはニヤリと面白いものを見つけたとばかりに口元を歪めた。
「へェ…ただのバカじゃないってことか」
「自分の身を守るために情報は不可欠ですから」
何も分からないこの世界のことをカナタさんはわざわざ説明してくれているのだ。
それをただ聞き流すようなことはお互い時間の無駄にしかならない。
ごく当然のことを言っただけなのにも関わらず、ますますカナタさんは楽しそうな顔になった。
近寄りにくい雰囲気がそれによりガラリと変わり、頼れる兄貴のように見えるから美形というのは不思議だ。
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