silver wolf | ナノ




17


声が聞こえたかと思えば真っ赤な刃みたいなのが熊モドキの背中に当たり、勢いよく吹き飛んでいくのを茫然と見つめる。
あんな怖いものを、たった1発で倒した…たぶん魔法だろうけど、それを使った人が熊モドキの後ろから見えて俺は思わず目を見開く。
俺達がいたところではあり得ない、たぶん地毛だろう銀髪、灰色の瞳は片方は白い包帯が巻かれていて見えない。刀を鞘に納めた時、向こうも俺のことに気づいたのか…2人の目があった。
真正面から見たから分かる。この人がとても整った顔立ちをしているということが。
柚樹の女顔みたいな可愛らしさではなく、どちらかと言えば"男前"の部類に入るだろうが、やはり"綺麗"だという印象を受ける。
例え片目が見えなくても、その美貌が衰えることは全くなく、むしろ包帯の白がますます際立たせているとさえ言えた。
俺を見て何かに驚いているのか、ズカズカと近寄ってきたかと思えばいきなり顔を近づけられてかなり焦る。
真っすぐに俺の目を見詰めてくる彼の吐息が普通に分かる距離で…もう少しだけ近づけばキスさえできる程近い距離に先程の恐怖も忘れてうろたえる。


「お前、一体何者だ…?」


近づけていた顔を遠ざけていった言葉に、俺は普通に自己紹介するも…全く信じてもらえない。
冷めた目で見下され、その目に込められた殺意に先程感じた恐怖を思い出し、目頭があつくなるもグッと我慢する。
この人はたぶん、自分の害となると感じたら迷いなく俺を殺そうとするだろう。
この世界の強さとかは全然分かんないけどこの人が強い部類にいることは容易に想像つく
細身で俺とそんなに変わらない身長だけど無駄な肉なんてついておらず、全体に引き締まった体付きを見てもそれは想像できる。


「……俺がたぶんこの世界の人間じゃないって言ったら信じてくれますか?」


だから、俺はありのままを告げることにした。
信じてくれないかもしれないけど、半分ヤケクソになって俺にとっての真実を言っていく。


「親友と一緒にいつも通り歩いていたら地面に穴が開いて、気づいたらアイツとも離されてここに1人ポツンといて、見たこともない巨大な化け物に殺されそうになってたっていったら信じてくれるんかよ?」


最後敬語がなくなったことにも気づかないぐらい、俺は必死だった。
俄かには信じれないことを言っていると分かっていたから、この人がため息とともに髪の毛をかきあげた時はもう殺されるんだと覚悟したけど。


「……ったく…しょうがねェな」


近くにあった木に背を預け、面倒くさそうにだったけど確かに言った。


「詳しく聞いてやる」


――その言葉に泣きそうになったのは恥ずかしいから秘密だ。




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