silver wolf | ナノ




14


眩しくて目を閉じていたが、次の瞬間――確かにあった足元が、唐突に消え失せた。


「は?」


思わず間抜けな声が漏れる。
それもそうだろ?今まで当たり前のようにあった地面が唐突に消えたんだから。
そして足元がなくなってどうなるかというと…結論からすれば、俺達は落ちた。


「わああぁぁぁぁぁ!!」


訳の分からないことが立て続けに連続で起こっていてもう脳が理解することを放棄している。
だって今から俺の家行って普通にのんびり柚樹と過ごすつもりだったのに、何で今俺はこうしてよく分らないところを落ちてるんだ?
変な声が聞こえたかと思えば急に足元が光り、そしてその足元が消え失せて俺たちは今落ちている。


「、っおい柚樹!どこだ!?」


一緒に落ちたはずの柚樹の名前を何度も叫ぶが、一向に返事は返ってこない。
自分の手すら見えない程真っ暗闇なのだ。柚樹の姿が見えるわけもなく、俺は何度も名前を呼ぶことしかできない。


「柚樹!!」


声はこの闇の中では響かず、まるで吸い取られているような錯覚さえ覚える。
もしかしたら気絶しているのかもしれない。
怖いものが大っ嫌いな柚樹にこのオンパレードはたぶん耐えきれないだろう…


――"闇は始まりで終わり。理のしがらみも通用せず、孤高を高める闇。光を厭い希望を恨み輝きを捨てた者のみが手にする至福…


まるで何かの呪文のようにあの老人みたいな声が呟くのがどこからともなく聞こえてくる。
まず間違いなく、俺達がこうなっている原因はこの声の持ち主のせいだ。


――"異界よりの来訪者、我エリゴールが呼び出しき人。恐れるな、厭うな。すべては闇とともに…"


ぐにゃりと闇が揺れたのは、絶対に気のせいなんかじゃない。



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