silver wolf | ナノ




12 yuta side



俺、卯月勇太は特に何か秀でたわけでもない普通の人間だった。
特徴として強いてあげるのなら、俺の家は非常に貧乏だったという点と親友が非常に顔が整っている点の2つだと思われる。
家が貧乏なのはもう仕方がない。
高3の俺を筆頭に下には3人の弟と2人の妹がいて、よくテレビなんかで見る貧乏大家族ってやつだからだ。
めっちゃ貧乏ってわけではなかったと思う。食べる物着る物なんかは決して贅沢はできなかったけど不自由を感じたこともない。
サラリーマンの父とパートの母親を助けるため、俺と2個下の妹はせっせとバイトに明け暮れた高校生活を送っていたけどそれも別に強制されたわけでもない。
というか俺らがいくらバイト代を渡そうとしても頑として受け取ってくれず、仕方がないから下の兄弟たちにお菓子を大量に買っていた。
普段は恥ずかしくて口が裂けても言えないが、いい親だったと思うし自慢の家族だった。


「ねぇねぇ、今度勇太の家にまた遊びに行っていい!?」

「遊びに、って…俺んチなんにもねーじゃん」

「いーの!僕が行きたいんだから!」


そして俺の特徴の2つ目。綺麗すぎる親友がコイツ、坂下柚樹(さかしたゆずき)だ。
俺とタメの18歳のピチピチ(死語)の高校生だが、明らかにコイツは俺らの平均身長に達していない。
178ある俺に対して柚樹は168。つまりちょうど10cmも違う。
顔立ちも現役女優の母親の血を色濃くひいているのか、サッカー監督の父親のような男らしい顔立ちとはかけ離れた所謂女顔。
しかしその顔立ちは非常に整っており、男であるのに同じ男から告白を受ける程だから相当のものだと分かってくれるはずだ。


「まぁ別にいいけどよ。アイツらも柚樹が来たら喜ぶし」

「本当!?」


弟たちは柚樹が来ると構ってもらいたくて柚樹の傍からベッタリと引っついて離れない。
そこには高1の妹から4歳の弟まで年は関係なく、兄である俺をさて置いて柚樹に懐いている。
少しだけグレて短めの髪を明るめの茶髪にした俺とは違い、グレることなく生まれたままの艶やかな黒髪の柚樹には親も甘い。
(余談だが、俺が黙って髪を染めた時親父に張り飛ばされた)
忙しい柚樹の両親に代わって何かと気にかけていることを俺はよく分かっている。
もちろん、それで柚樹を嫌いになったりなんかしないしな。


「ふふっ。本当に勇太って兄弟想いのいいお兄ちゃんだよね」

「そーかぁ?煩くて生意気なガキ共別に何とも思ってねーって」


学校帰りのまだ日の明るい通学路を柚樹と2人、肩を並べて俺の家へと歩いていく。
高校で出会った仲だけど、もう子供の頃からの付き合いみたいなカンジもあった。
いつも通り生きていつも通りやっていく。
高3で大学受験のこととか考えながら、適当にやっていけると――俺はこの時まで本気で信じていた。



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