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「ウヅキユウタ?」
なんだその長ったらしい変な名前は。
「あ、いやっ!勇太が名前です!」
「じゃあ前のウヅキってのは何なんだ?」
「それは名字で……えっと、家の名前?」
家?コイツは何を言ってるんだ。
誰も家の名前なんて持ってないし、そんなもの聞いたこともない。
…コイツ、もしかして俺をおちょくってる?
「俺さぁ、今そんな冗談に付き合ってる暇はないんだけど」
「じょ、冗談なんかじゃ…!」
嘘は許さない。
若干キツめの視線をその黒い双眸を睨みつけると、若干コイツの顔が泣きそうになった。
「……俺がたぶんこの世界の人間じゃないって言ったら信じてくれますか?」
「は?」
「親友と一緒にいつも通り歩いていたら地面に穴が開いて、気づいたらアイツとも離されてここに1人ポツンといて、見たこともない巨大な化け物に殺されそうになってたっていったら信じてくれるんかよ?」
あ、ケーゴが取れた。
なんて思ったりもしたけど、もしコイツの話が本当なら結構大事な問題になる気がする。
ここで見捨てるのも簡単だが、黒を持つコイツを見捨てることができないのもまた事実。
ただの少し裏があっただけのBランクの依頼だと思ったけど…面倒なことに足を踏み入れちゃった感がビシバシと感じる。
「……ったく…しょうがねェな」
ガシガシと髪をかきあげ、俺は近くにあった手頃な木に背中を預けた。
泣きそうな目で見てくるソイツに、俺は面倒くさげに一言呟いた。
「詳しく聞いてやる」
。
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