08
確かに少し妙だとは思っていた。
スライムが人を襲うだなんて今まで聞いたことないし、あれ程まで数が集まることもない。
だがそれらはスライムを束ねる上位の魔物がいるのなら話は別だ。
「報酬値上げしてもらわねーと割に合わないっての…」
Bランクにしては単調だとは思ったがこんな裏があったとは…一杯食わされたな。
アイリスのしてやったり顔を思い浮かべイライラするが一度受けてしまった依頼は完遂が基本中の基本だ。今さら引くことはできないし、したくない。
用心深いことで有名なギルドの人間なんだ。俺がこの依頼を蹴ったらまず間違いなく俺はギルドに立ち入ることができなくなるだろう
面倒なことこの上ないが、やるしかないだろう。
この森の中に移動ポイントはないから地道に歩いていかなければならないのがまた面倒くさい。
「ぜってー値上げさせてやる…」
あの口が達者すぎるアイリスに口で勝てるかどうかは置いておく。
俺もそこそこ口はまわるほうだと思っているが、あの女はその上をいく。
笑顔でグロいことをペラペラペラと言う姿はあまり心臓に悪い光景ではない。
「よ、っと…」
片目のみという視界の中、時折襲ってくる魔物や獣を紅咲で斬りながらどんどん森の奥へと進んでいく。
さすがにこんな森の奥まで来たことはなく、進むにつれてどんどん日の光は失われていってる。
神隠しの森と言われる所以はこの不気味さからも来てるのかもしれない。
もし、外に移動ポイントを持っていない魔術師がここまで来たらまず間違いなく遭難する。そう確信する程入り組んだ森だった。
――グォオオオオ…
「お、近ェな」
つーかスライムの親玉だからかなりデカイスライムだと勝手に思ってたけど、この咆哮を聞いてるかぎりビックスライムじゃないような…
どっちかというと獣だな。怒りか何かで理性を失った手負いの獣。
こーゆう手合いには関わらないのが一番いいのだが、今回はそうも言ってられない。
特に急ぐわけでもなく歩いて咆哮の発信地へと向かっていく。
――グオォオオオオ!!
声が近いな、と思っていたら目の前に森の出口が見えた。
。
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