07
――はしゃいで嬉々として斬りまくった結果、たった数分で全て片づいてしまった。
俺の周りには何十体ものスライムのなれの果てが転がっており、知らない人が見たら倒れるかもしれないぐらいヤバい光景が広がっている。
気持ち悪い粘液は俺とこの刀にはもちろん一滴もついていない。
というか俺はこの紅咲に返り血などがついているのをまだ1回も見たことがない。
俺の腕がいいのもあるかもしれないが(自画自賛してみる)、それ以上に妖刀としての能力だろう。
"綺麗好き"で"掃除"大好きな紅咲が勝手に汚れを落としていると俺は思っているし、たぶんそれは間違ってはいない。
「よーし依頼かんりょー」
ここまで数を減らせば問題ないはず。
紅咲を鞘におさめて依頼完了を証明するために懐から1枚の白い紙切れを取り出した。
「んー取りあえずここら一体の死体を入れれば問題ないよな…」
少し物騒なことを呟いた後、その紙をスライムだったモノの上に落とす。
普通の紙なら当然粘液の上なんかに落としたら一瞬でふやけてだめになるが、この紙は違う。
何せ魔力のこめられた紙だ…たかが粘液如きでだめになるわけがない。
「はい、"吸収"−」
白い紙の上に人差し指をおき、軽く呟く。
すると白い紙が一瞬で夥しい数のスライムの死体を飲み込んだ。
紙の下にあったものがなくなり、宙に浮いていた紙ははらりと地面に落ちる。
初級補助魔術――術者の魔力の込められた物体に対象物を飲み込む"吸収"だ。
取り込めるものは力さえあれば人間も豪邸でさえも可能で、ナカのものはいつでも取り出し可能な日常で使われる術だ。
俺は普段は首から下げている、希少な"ロゴロイド"と呼ばれる宝石(魔術によく馴染む優れ物)に入れているが、こういう依頼証明の時はこの白い紙に入れることにしている。
使い捨て用だな。"ロゴロイド"にこのスライムは入れたくないし…
「さて、帰るか…」
1人で仕事してると独り言が増えて困る。
スライムの残骸がなくなったことを確認し、街に戻ろうと術を展開させていた時。
――ウボオオォォォ…
「……なんだ?」
耳障りな声が聞こえ、ゆっくりと声がしたほうを振り返る。
。
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