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32


時間にして十分程度、浦原たちの後をついて歩いた先にあったのは、一軒の小さな店だった


「浦原、商店…?」


昔ながらの、というキャッチコピーが似合う小さな店に掲げられている看板の文字を口にする

浦原と呼ばれていたこの下駄帽子の男の店なのは間違いないだろう

店の中も外観を裏切らないものだった


「さァ雨は夜遅いから先に寝ててくださいね」


浦原の後ろをを歩いていた雨は、その言葉にコクリと頷くとおやすみなさい、という小さな声と共に店の奥へと消えていった


「お2人は親御さんに連絡いれなくて大丈夫なんですかね?」


「あー…大丈夫、です」


ツナの家は多少遅くなったぐらいでは何とも言われないし、クロームに至っては例え帰らなかったとしても犬や千種は何とも言わないだろう

そうっスか、と軽い口調で相槌をうった浦原は、一行を客間へと連れていく


「さて、と」


それぞれ座るように勧め、落ち着いたのを見計らって浦原は口火をきった


「まずははじめましてっスね〜。浦原喜助っていいます。しがない駄菓子屋の店主をやってます」


「あ、沢田綱吉です!よろしくお願いします…こっちはクロ…じゃなくて凪、で亜希ちゃんの双子のお姉さん、です…」


無言のままのクロームの自己紹介を加えつつ、ツナは頭を軽く下げる


「…俺は黒崎一護、死神代行で……アイツの、クラスメイトだ」


最後、絞り出すような口調で言われた言葉に、クロームが反応する


「…っクラスメイトって…!あの女の子が言ってた…!あの子を追いつめたのは、あなたたちだって…!どういうことよ…っ」


「く、クローム落ち着いて…!」


激しい怒りを瞳に宿し、感情も露にして真っすぐに一護を見つめるクローム

ツナの制止の声が耳に入らないのか、普段の彼女ではあり得ない口調で責める


「あの子、ずっと苦しんでた…!泣いてた…っ!!全部、アンタたちのせいで…!!」


「、俺は…」


怒りの中に見え隠れする、自責の念

今自分を責めているこの少女もまた、自分を責めていることを感じ取っている一護は何を言えばいいのか分からず、口ごもる

謝ってすむことではないのだ……少し間違えれば、亜希は永遠にいなくなってしまうところだったのだから


「はーい、落ち着いてくださいねー凪サン。色々順を負って一つずつ確認しましょ?」


気のぬけた浦原の言葉に、まだ言い足りないと口を開こうとするも再度ツナからもストップがかかり、何も言葉にすることなく口を閉ざす

落ち着いたとは言えないが、取りあえず静寂を取り戻した空間で、パチリと扇子が閉じられた音が響く

各々の注意が自分に向いたのを感じ、浦原は薄らと笑みを浮かべて、言った


「沢田サン、凪サン。あなたたちは、"死神"の存在を信じていますか?」


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