30 彼女のナカの彼
「――うわっ!?」
突き飛ばされたような衝撃を受け、ツナは地面に転がった
「いててて……、ってここ…」
受け身なんてとれるわけもなく、思いっきりぶつけた尻に顔をしかめるもすぐに状況を思い出す
周囲を見れば、そこは先程までいた公園の入口――だけど、公園の中には誰もいなかった
はじきとばされたのだと、すぐに閃いた
「クローム!亜希ちゃん…!」
いくら名前を呼んでも、彼女らの返事は聞こえてこない
公園に足を踏み入れようとしても見えない壁に阻まれ、それも叶わない
「ど、どうしよう…!」
何もすることができず、ただ唇をかみしめた時
「どーやらお困りのようですねェ」
すぐ後ろで、声が響いた
「しっかし大した"壁"ですねェ。ここまで近寄っても殆ど霊圧が漏れてませんし…完全に隔離、いや拒絶された空間か…」
「だ、誰!?」
見るからに怪しげな格好をした男は胡散臭げな笑みを浮かべる
「アタシですか?ただの駄菓子屋さんッスよ」
甚平姿に帽子と下駄、そして独特な雰囲気を纏う男
「微妙な霊圧の乱れを感じて来てみただけッスから。さぁ雨、」
「…はい」
「えっ!!?」
ウルルと呼ばれた気が弱そうな少女が構えたのは巨大なバズーカーで、ツナはそのあり得ない光景に目を見開く
そんなツナの驚きには構うことなく、男は軽い口調で命じた
「ドカンとやっちゃってくださいな」
ドガァァンッ!!
物凄い轟音と共に躊躇うことなく発射されたそれに、ツナはただ茫然と立ち尽くすことしかできなかった
某家庭教師で突拍子もないことはある程度耐性があるというのに…この男たちも、相当アレだ
行く手を阻んでいたあの"壁"が消えていることには、もう何も言うことができなかった
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