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ポタリ、ポタリと血が零れる
「な、に……?」
何が起こったのか分からない、そう言いたげな表情を浮かべたのは、ミヨ
その次の瞬間、斬りかかったはずのミヨの体から、勢いよく血が噴き出た
「亜希…?」
小さく呼ばれた名前に、反応を示すことはない
何故斬られたはずなのに無傷で、斬りかかったはずなのに斬られているのか?
その状況の理由に、一護は1つだけ心当たりがあった
ルキアを助けに瀞霊廷に赴いた時の――更木剣八と戦った時
「、霊圧負け……?」
斬魄刀に寄りかかりながら、一護は呟く
「まさか…!この私の霊圧が負けたとでも言うの!?」
刀を持っていた手は吹き飛び、体半分を赤く染めたミヨは忌々しげに叫ぶ
確かに刃は亜希の体を突き抜けた――なのに、血を流したのはミヨ
『―――随分と好き勝手やってくれたなァ、テメェ』
自分の体に深々と突き刺さっている斬魄刀を何てことないかのように抜きながら、亜希は口を開いた
普段の彼女からはかけ離れた、荒っぽい口調
刺された傷は血を流す前に跡形もなく消え去った
『"俺"がいなきゃあっという間に喰われてただろうよ。"あの男"のお陰でようやく自由に動けるようになった』
「一体なんなのよ…!!」
『アイツはヘドが出るくらい甘ったるいヤツだが俺は違う。悪ィがお前が何であろうと俺には関係ねェ』
躊躇なく刀が振り下ろされ、目を見開いたミヨの体を切り裂いた
先程負った傷もあり、あっけなく…その体は塵となって崩れていく
――戦う力のない少女は、駒が自分の手の中から離れた時こうなるのが決まっていた
「なんで……私が…」
『"俺"の存在に気付けなかった時点でお前の負けは決まってた。見くびるんじゃねーよ、クソガキ』
"男らしい"仕草で、亜希はニヤリと笑い消えゆく虚を視る
『"死神"…ナメんじゃねーぞ』
――それが、ミヨが聞いた最期の言葉だった
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