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「―――これは…気晴らしに散歩していただけですが…随分面白いものを見つけました」


男が気まぐれに訪れたのは、とてもヒトのものとは思えない程壊れかけた場所だった

荒れ果てた大地には足の踏み場もない程、辺り一面に大量の刀が突き刺されており一歩前に進むのも躊躇われる

大きさも形状もバラバラのいくつもの刀

――それらは一つ残らず鎖で繋がれていた


「へぇ…」


いくつもの刀を経由して、最終的に鎖は1人の少女へと繋がっていた

まるで古い聖職者のように十字に貼り付けにされている少女の体には、幾重にも鎖が巻き付けられている

心臓がある位置には1本の刀が突き刺さっていた

血が流れ、その足元には既に血だまりができている


「壊れかけた世界に、壊れかけた人ですか…」


俯いたまま、ピクリとも動かない少女の前に立ち、男は笑う


「クフフ…さすがですね。姉妹揃って僕の好奇心をくすぐるのが上手い」


僅かな均衡でギリギリの場所で立ち尽くしているその少女

雁字搦めに絡まれている鎖は少女が動くことを拒んでいる

だが、少女の胸に突き刺さっている刀に――鎖は、つけられてなかった


「あまりこういう形で干渉するのは好みではないですが……」


ゆっくりと、手をのばす

刀の柄を握れば、拒絶するかのように強い静電気がバチリとまとわりつく

だがそれに怯むことなく、男は強く柄を握り締めた


バチバチバチッ


「ここで"殺される"には惜しいですから。クロームのためにもなりますしね」


肉が焼ける不快な臭いを"感じる"も、男から笑みは消えない

胸に突き刺さる刃は、他に散らばる刀とは根本的に"違う"


「クフフ。あとは貴女自身で頑張ることですね」


小さく呟いた後、男は"火傷を負った"手で勢いよく刀を抜いた

刀傷から溢れてくるのは赤い血液ではなく、淡い白色の光

光が溢れ、それは鎖を壊しながらこの空間をゆっくりと満たしていく

本来の姿を取り戻しつつあるこの精神空間で、男は特徴的な笑みをこぼすと…光に紛れてその姿を消したのだった







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